全日本救助犬団体協議会の仲間による奈良県五條市での行方不明者捜索の報告

2009年10月、九州救助犬協会は「日本捜索救助犬協会」「日本レスキュー協会」「沖縄災害救助犬協会」「北海道ボランティアドッグの会」と全日本救助犬団体協議会』を発足させました。
いつ起こるか分からない災害に対して、NPO法人を中心とした救助犬団体が
協議会を設立させ、災害持の共同出動体勢を確立させること(現場で協力して
捜索活動を行うこと)、災害救助犬の進歩・発展を図り人命救助に奇与することを目的としています。


            ~調印式2009年10月16日~

当協会会員でも、「全日本救助犬団体協議会」をあまりご存じでない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「全日本救助犬団体協議会」は、発足後より年に数回の合同訓練を行ったり
(7月にも熊本県にて合同訓練を開催)、3月に発生した東日本震災の際にも
連絡を取り合い、被災地で協力して捜索を行っています。

この「全日本救助犬団体協議会」の最近の活動を報告します。

今回の台風12号の影響によって大規模な災害が発生した奈良県五條市大塔町の宇井地区に、「全日本救助犬団体協議会」の、「日本捜索救助犬協会」と「日本レスキュー協会」が出動し、行方不明者捜索を行いました。
本日紹介するのは、「日本捜索救助犬協会」のハンドラーさんからの捜索報告です。この行方不明者捜索に、九州救助犬協会にも出動の打診がありましたが、検討した結果、今回は出動を見合わせています。
よって、この提供して頂いた報告を共有し、一緒に検証していきたいと思います。
また、当協会員はもちろん、沢山の方に「全日本救助犬団体協議会」の存在や、活動している仲間達を知って頂きたいと思います。

以下、ほぼ原文のまま紹介します。画像も提供して頂きました。
現場の状況と緊張感、待機中の救助犬とハンドラーの様子が分かると思います。

NPO法人日本捜索救助犬協会に捜索要請があり、台風12号による大規模土砂崩れがあった奈良県五條市大塔町の宇井地区に行方不明者の捜索に行ってきました。
 日本捜索救助犬協会からは4頭(デイジー、さくら、アジュガ、アルディ)が出動しました。
 
デイジーとハンドラーさんは前日の和歌山県の捜索にも日本レスキューと協力して加わりました。
さくらと、アジュガと、アルディとは、仕事の都合もあり、8日木曜夜に出発し、9日朝6時30分頃に奈良県五條市の消防本部につきました。
9日朝7時の消防の説明によると捜索に入る地域の上流に土砂ダム(瓦礫や土砂による堰止湖)ができていて決壊の危険性があるため、救助犬の捜索は待機であるとのことでした。
消防本部近くの青少年センターの2階にワンズと一緒に待機させていただき、ずっと車に乗っていたワンズを散歩させたり朝ごはんを食べさせたり、近くで簡単なランナウェイをしたりしていました。
「捜索に入れるのだろうか」などと話しながらいたところ、13時30分に「捜索要請」の連絡が入り消防署の先導車に続きあわただしく出発しました。


 

 1時間弱山間を走り今回の災害の爪あとを見ながら進みます。
山肌が崩れ、一般車両は通行止めとなっている道を進みます。
あとわずかで捜索現場の宇井地区というところでサイレンが鳴り「退避指示」。
中間の吉野路大塔の道の駅まで戻ります。


 

一時間後問題なしということで15時45分に再出動です。
対岸の山肌が大きく崩れ、川を越え津波のように道路上部にまで土砂がせりあがり周囲の住宅を巻き込み、行方不明者が10名ということをお聞きしました。
16時40分から捜索開始です。
土砂が川の水を押し上げ、崩れた山の反対側の集落が跡形もないような状況でした。
その下に捜索に入りました。


残念ながら行方不明者の発見につながる反応はなく17時40分捜索終了となりました。
18時現場を離れ五条消防署に戻りました。
翌日の救助犬による捜索は、上流の土砂ダム決壊の危険性があるため行わないとの消防本部の決定を受け、夜遅くに帰途に就きました。